「温故知新」について

― 暖簾にかかわる話 ―

【イセッピー君のDJ a GO GO!】

 絶好調の車エビ次郎先輩がまたまた登場。今回も、ちょっとアナクロな意見が逆に新鮮に響きます。

 温故知新の意味

いせっぴイセッピー: 「古いことなら車先輩に聞け」と言われてやって来たのですが、「古きをたずねて新しきを知る」っていう諺があるんだそうですね。古いことを勉強して、どうして新しいことがわかるんですか?

車エビ次郎: お前は漢字を知らんな。オリジナルは「故きを温ねて新しきを知る」って言うんだ。

イセッ: 話し言葉なら一緒じゃないですか。

: これは論語で、「温故而知新、可以為師矣」、つまり「古い事柄も新しい物事もよく知っていて初めて人の師となるにふさわしい」という意味だ。「故」だから、理由や原因を明かにする中で新しいことを語れ、ということだろう。しかし今では、「古いことを研究していく中に新しい発見がある」という意味になった。

イセッ: 本当に、古いことを勉強すれば、新しいことが見つかりますか?

: まあ、あると言えばあるし、無いといえば無い。

イセッ: えー、何ですかそれは。答えになっていないような気が。

: 有るか無いかは、問題意識を持っているかどうかが分かれ目となる。古いことをどう勉強するのか、何のために勉強するか。問いの無いところに答えはない。ただ闇雲にたずねても答えは出んよ。

イセッ: 「やみくも」って何ですか?

: 滅多矢鱈に、ってことだ。

イセッ: 「めったやたら」って何ですか?

: 闇雲ってことだー。

イセッ: ・・・?????

: ・・・はあ、はあ。お前と話しとると、こっちが疲れるわい。

 暖簾をめぐって

いせっぴイセッ: どんな古いことをたずねていくと、新しいことが分かりますか?

: そうだな、例えば昔は「暖簾を傷つける」とか「暖簾にかかわる」という言葉があった。

イセッ: 「のれん」って?

: 屋号などを染め抜いた布だ。

イセッ: 「やごう」って?

: 家の名、家の称号だよ! 。今で言えば商標や会社名だ。これを布に染めたんだ。

イセッ: じゃあ、「暖簾を傷つける」というと、この布を破いたりするんだ。

: そうじゃないよ。ここで言う暖簾は、その家の格式のことで、例えばそこで働いている人が悪事をはたらいたり、欠陥商品を出せば、店や会社の評判が悪くなるだろ。そういうことを言うんだ。

イセッ: なるほど、暖簾というのは全体を象徴しているんですね。

: そういうことを意識して仕事をせい、ということだ。迷った時は、目先の金より、暖簾を傷つけないことを念頭においておけば、決して商売が傾くことはない。

イセッ: はー、なるほど。事故が多発してるのに、リコール隠しを続けていた会社がありましたが、ばれたら評判が悪くなるから、あれは暖簾に傷をつけたことになるんですね。

: そうそう。ちゃんとリコールしておけば、これほど評判が悪くなることは無かったんだ。

イセッ: 仏教にも暖簾があるのでしょうか?

: 一枚の暖簾ではないかも知れないが、やはりあるだろうな。特に僧侶が「不埒な悪行三昧」をすれば、暖簾に傷をつけることになる。逆に仏教徒の生活が魅力にあふれていれば仏教の評判も上がるだろう。

イセッ: 暖簾は、今で言えばブランドってところですか。確かに昔も今もブランドの持つ力は強いですからね。

 効率ばかり追求しないで

: ブランドといえば、たとえば時計でも、今は海外のブランド品が人気だが、日本の時計ももう少しで一流に成れるところだったのに、惜しいことをしたもんだ。

いせっぴイセッ: へー、どういうことですか?

: 日本の時計会社がクオーツ時計を開発した時、余りにも正確で、安価で作ることができるもんだから、手巻き式時計の製造をほとんど中止してしまったんだ。

イセッ: そりゃー、安くて正確ならそっちの方がいいですよ。手巻き式は狂いやすいし、高いんでしょ。効率が悪ければ作りませんよ。

: そこだよ。確かにクオーツは安くて正確だが、世界中にクオーツ時計が出回ってしまうと、逆に手巻き式が珍しくなって、手作り時計としての価値を持ちはじめた。多少狂っても、巻くのが面倒でも、高くても、それを補って余りあるのが手作り品ならではの満足感だ。日本の会社は、かつては手巻き式時計でも評判が良くなりつつあったのに、一旦製造を中止してしまったから、ブランドを獲得できなくなってしまったんだ。

イセッ: うーん、残念。もう少し、手巻き式の工場を残しておけばよかったのに。

: 今は日本の会社も、手巻き式時計を復活させているが、一旦無くしてしまったブランドはなかなか認知されないんだ。クオーツ時計の儲けはもちろん大きいが、安売り時計との競争にさらされて苦戦を強いられている。

イセッ: 先は分からないものですね。

: だからだ、「故きを温ねて新しきを知る」ということさ。非効率的ということで消滅の危機にあるものが今も日本に沢山ある。それを完全に消してしまっていいのかどうか、一考を要するな。

イセッ: いやー、車先輩もたまにはいいこと言いますね。

: たまには、じゃないだろ。君はまず常識ってものを知りなさい!

2004/7/12 掲載


[index]   [top]

浄土真宗やっとかめ通信(東海教区仏教青年連盟)