【水のヒメゴト】

ぼくの住む町にはまだ雨乞いの風習がのこっている。
霊力を備えたヒメが、人の見ていないところで秘密の方法を用い、
池や沼の主を呼び出し、降雨を祈願するのだ。
クラス委員の彼女は、造成地に掘られた
直径2メートルたらずの砂利穴にも
主が姿をあらわすほどの比類なき力を持つといわれる。
その儀式の様子は想像する以外にないが、
ひさしぶりの雨が田畑をうるおすような日には、
何となく男子生徒たちは胸の高鳴りを覚えるのが例である。

水に映る姿
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