見仏記
 2000年2月18日(日)
 葛井寺<フジイ・デラ>〜当麻寺<タイマ・デラ>
 
by 月影さん

 

【葛井寺<オススメ:十一面 千手千眼観音>】


重文の四脚門を入るといきなり両脇に露天商が。
流石に地元密着寺、商店街を抜けた続きにあるだけのことはある。
毎月18日が本尊開扉のため、この日は露天がでるのだそうだ。
しかも売ってるものが年輩の人用の下着とか鞄、乾物、木や水晶の置物、
なんでも1個100円の日用品とか。参拝客も圧倒的に中年以降の方が多い。

目的の千手観音は結構大きなもので、左右の幅があるため、
開扉されていても端まで見ることができない。
現状ではやや横広がりに脇手が着いているのだけど、
当初は正円形に広がっていた可能性が高いらしい。
胴体部は脱活乾漆造で脇手は桐の木心乾漆造。
ここは双眼鏡禁止。まあ、大きいので顔ははっきりわかるけど。
600円の小冊子を買えば、フルの状態の写真が正面、斜、背後までわかる。
手が多すぎるので、斜めから撮った写真はかなり気味が悪い。
背後のものは笑える。

脇手をすべて撮った写真もあるのだが、これが何だかホッとする。
本堂で直に見ると下から見上げる格好になるのだが、
目線より少し上から撮影された顔は大分印象が変わって、やわらかい。
こちらの方が好み。

ところで、この寺で結構拾いものだったのが、ほとんど人が寄りつかない
阿弥陀二十五菩薩堂。中心に等身大の阿弥陀さんと両脇に観音と勢至が居り、
さらに両脇のガラス張りの中に3段に菩薩達がずらーっと並んでいらっしゃる。
堂内はがらんとしていて、結構広いけど、奥の左右いっぱいに広がるガラスケース以外に
何があるわけでもなく、堂内に上がることもできないので、さい銭箱の後ろにまわって
冊から顔を突っ込んで観るしかない。
なかなか良さ気で、こんなんだったら中に入れろーって感じ。

※余談だが、この日境内のトイレでカメラを落とした。 底に着いている電池挿入部の蓋が壊れた。 露天でおっちゃんに「セロテープない?」と聞くと、セロテープに混ざってビニールテープ3色パックが100円であったのでそれを購入して蓋を止めた。 露天も悪く無いなと思った。 しかし、落下時の衝撃でカメラのオートフォーカスが完全にイカレてしまい、 マニュアルカメラになってしまった。まあ、紛失よりいいけど。

その後、駅前からバスで10分くらいのところにある野中寺(やちゅうじへ。
いかにも新しそうに見える寺。
でも、もともとの敷地はかなり広く法隆寺式配置の伽藍があったらしい。
今は礎石が残るだけ。(何故か石棺までも) 本尊は薬師如来で秘仏のため見れない。
両脇の不動、愛染明王もお堂の全面にあるのぞき穴から見れるのみ。
しかし、この寺には毎月18日のみ拝観できる金銅弥勒菩薩(重文)がある。
拝観をお願いすると、寺務所の横の引き戸から中に入るように言われ、
縁側から靴を脱いで4畳半ほどの和室に通される。
そこにぽつんと厨子がおいてあり、住職が扉を開けて説明してくださるのである。
飛鳥時代末期の特色のなかなかかわいらしい顔の弥勒菩薩で大きさは高さ30cmくらいだろうか。
天智天皇5年の造で、めずらしいのは台座にはっきりと
「丙寅年四月大旧八日癸卯開」云々と造像記の銘文があること。
いつ造られたか物議をかもす仏像が多い中で、これはめずらしく、重要だそう。
このお寺はほかにお染め・久松の墓があるので有名らしが、私もよっしーも
「誰、それ?」状態で無視。その後駅へ戻って、電車で当麻寺へ。

 

 

◆葛井寺◆
大阪府藤井寺市藤井寺1−16ー21
◆アクセス◆
近鉄南大阪線「藤井寺駅」下車、徒歩へ5分
◆葛井寺のことが載っている「ふじいでら市商工会」ホームページ◆
http://www.f-sukiyanen.or.jp/


【当麻寺<国宝、重文だらけ/オススメ:金堂と奥の院宝物館の二十五菩薩来迎像>】

近鉄南大阪線の当麻寺駅から歩いて0.7km。(帰りには駅まで0.9kmの表示。何故じゃ。)
東門を入ると正面に現在の本堂である曼陀羅堂、左に金堂、右に講堂がある。
金堂より手前にあるのが 中之坊で講堂の手前は千仏院とかいう
廻遊式庭園があった。(ここは見ず。)
お寺に行き慣れた人なら「?」と思うのが、塔の位置。東塔、西塔が金堂より左手の山側に
参道と平行する位置にあるからだ。これは昔、現在の金堂が本堂だったせいらしい。
この両塔は国宝で、創建当時(天平時代)からの姿で二基とも残っているのはめずらしいらしい。
言われてみれば、だいたい塔ってのは火災にあうからね。

で、まずは曼陀羅堂へ。ここは建物も国宝で、その名の通り中将姫が蓮の糸で織ったとされる
(実際は違うんだろうが)巨大な曼陀羅が須弥壇の中央にでーんと祀ってある。
けど凄いのはこれも国宝の須弥壇。すばらしい螺鈿細工で飾られているのだ。
もちろん「触るな」と書かれているけど、人がいなけりゃ触りたくもなるぞ。

次に講堂(重文)へ。本尊は丈六の阿弥陀如来座像(重文)。寄木造漆箔の藤原時代の仏像。
とても「家内円満、人類みな兄弟」みたいな温和な顔だち。他に多聞天、不動明王、
妙幢菩薩(地蔵菩薩の別名、重文)、千手観音
がいた筈なんだけど記憶にないとこみると
好みじゃなかったんだろうなー。次が金堂(重文)。この三カ所の順序は指示されるのですよ。
本尊は白鳳時代の国宝の弥勒仏座像。塑像なんだけど、弥勒というより見るからに阿弥陀である。
こればかりは「弥勒だ」と気合いを入れていくと「あれ?」ということになる。

それよりもここは四天王(重文)がなかなかよろしいのですよ。
多聞天のみ鎌倉時代のものだけど、あとの三躯は白鳳時代のもので、
法隆寺に次ぐ二番目の古像だとか。
皆様直線的に静的に真直ぐ立っておられて、 風貌が異国風。
なんてったて、ヒゲがあるんですよ。 しかも全員。踏まれている邪鬼もいいぞ。
ちっとも苦しそうじゃないんだ。 なんか笑ってる風だったり、考え事してる風だったり。
ここを出て案内の人に勧められて奥の院へ。

別にぼたんの花なんぞどうでもよかったのだが行ってみたら、
あら、宝物館に良さ気な二十五菩薩来迎像が。
国宝の蒔絵経箱とか、重文の屏風や絵もあったけど、
そんなものよりこれが見たい!と拝観を申し込む。
ガラスケースの中にレイアウトされた高さ30c位の金色の菩薩達。
裾をひるがえしている地蔵菩薩とか、踊ってるのとか、いろいろ。
この配置には意味があるんだろうか? などと話しながらよっしーとマジマジと見入る。
これは良いです。機会があれば是非拝観を。


さて、この後は中之坊へ。新春特別公開があったのだけど、まー別にって感じだった。
霊宝館で損焼仏が公開されていたのだが、本当に何だかわからない焼けた木だった。
仏像もこうなると痛々しいというより、無惨な感じだ。
ここはぼたん園で有名らしいのだが、花が咲いていない庭をぐるぐる迷路のように歩いた。
一カ所、池のあるところは東塔を下から見上げる場所になり、
斜面にしだれ桜らしい大きな木があって春になれば見ごたえがありそうだった。

中之坊は役行者が道場として開いたところらしく、
本尊は中将姫の守り本尊の「導き観音」という十一面観音なのだが、髪の毛が青いのが
どうも腑に落ちないのだ。昔から青いのか?今どきなのか?
ここはお抹茶もいただけます。季節がら、雛人形が飾ってあったのだが、
なんとも豪華な十二単衣を着ていた。衣の厚さが半端じゃなかった。
それと有名らしい、陀羅尼助という胃薬を売ってます。
効くらしいですよ、よっしーの話によると。奴はきっちり購入していた。私は買わなかったけど。

当麻寺は二上山(ふたかみやま)の裾部にあるので紅葉シーズンに行くのも良さそうです。
そんなこんなで調度夕方になったので、帰路へ。夜はよっしー宅できっちり酔っぱらいました。
では、月影でした。


 

◆当麻寺◆
奈良県北葛城郡當麻町1263
◆アクセス◆
近鉄南大坂線当麻寺駅より徒歩15分
◆拝観時間◆
午前9時〜午後5時

 


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