村上春樹の原点 第3回青年文学講座(1997年7月13日、浦和市中央公民館にて) 講義メモ 1、村上春樹の経歴(参考資料、村上春樹ー群像日本の作家ー小学館) 1949年一月生まれ(48歳) 村上千秋・美幸夫妻の長男として京都伏見区に生まれる。 1955年6歳 西宮市立香枦園小学校入学、父村上千秋の勤める甲陽学院中学のすぐそば(学校の社宅?) (西宮から芦屋に転居、自宅) 1961年12歳 芦屋市立精道中学校入学、  1964年15歳 兵庫県立神戸高校入学 1968年19歳 早稲田大学第一文学部演劇科入学 1971年22歳 陽子夫人と学生結婚 1974年25歳 ジャズ喫茶「ピーターキャット」を国分寺で開店 1975年26歳 早稲田大学卒業 1979年30歳 「風の歌を聞け」で第23回群像新人賞を受賞 1980年31歳 「1973年のピンボール」 1981年32歳 専業作家に 1982年33歳 「羊をめぐる冒険」 1983年34歳 初めての海外旅行、ギリシャでアテネマラソンに参加 1984年35歳 約六週間米国を旅行 1985年36歳 「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」 1986年〜89年 断続的にイタリア、ギリシャ、トルコ、地中海の島などを旅行 1987年38歳 「ノルウェイの森」 1988年39歳 「ダンス・ダンス・ダンス」 1991年42歳 米プリンストン大学客員研究員 1992年43歳 同大学院で客員教授として日本文学のセミナーを受け持つ 「ねじまき鳥クロニクル」第一部連載開始。「国境の南、太陽の西」1994年45歳 「ねじまき鳥クロニクル」第一部、第二部刊行 1995年46歳 一時帰国。神戸市と芦屋市で自作朗読会開催(ボランテイア) 「ねじまき鳥クロニクル」第三部刊行 1996年47歳 地下鉄サリン事件の被害者62人にインタビュー 1997年48歳 「アンダーグラウンド」刊行     2、父、村上千秋氏について  甲陽学院の国語の先生、特種な学校。建物が語りかけてくる。 神戸高校(歴史、立地、クラブ活動、自由さ) 3、芦屋という町について 箱根と熱海の間に杉並区か世田谷区が広がっているような・・・。六甲山麓の住宅地  六麓荘、(テレビ撮影、ワコールの社長)   浜側、 埋め立て地、図書館、谷崎潤一郎の記念館、海岸線 4、「風の歌を聞け」 1、2 序文 デレク・ハートフィールド(実在しない作家)・・・ 3 鼠と僕が酒場で酒を飲んでいる 「金持ちなんてみんな糞くらえさ」 4〜6鼠の生き方 7 無口な少年 8〜9 小指のない女の子との奇妙ないきさつ 10 ジェイズバーでの出来事(無関係) 11〜14 ディスクジョッキー  15 彼女とレコード屋で再会 16 ジェイズバーで鼠にプレゼント 17 LPを貸してくれた女の子の行方をさがす 18 彼女から電話、 19 過去に関係した三人の女性 20、ジェイズバーで彼女と会う 21 ミシュレの「魔女」 22 彼女の家にいく 「あすから旅行する」 23 すべての物事を数値に 24 鼠の変化「人に会ってほしい」 25 ホットケーキ 26 死んだ三番目の彼女 27 鼠が恋人とのつきあいを「やめた」という 28 街について  29 ジェイが「相談にのってやれ」 31 鼠と僕のすれちがい。鼠のとりのこされた気分。これから小説を書いて行こうと思う。32「火星の井戸」 33、35、36 彼女から電話、食事、散歩、彼女のアパート。「中絶」 37 ディスクジョッキー、手紙、レコードを借りた彼女の消息 38 僕が東京に帰る39 後日談 40 最後にハートフィールド *小指のない女の子とのかかわり、 *鼠との友情、 *ディスクジョッキー関係の高校同級生への思い *過去の彼女たち *ハートフィールド  直接は関連のない五つの話が書かれている。なぜこんな構成をとったのか。 あまり厳密に考えないほうがいい?  初期の作品について・・・ ABCDEと普通に書く、これでは面白くない、それでBとCAとEを入れ替える。そうするとダイナミックなモメントがでてくる、まだ足りないそれでDを抜いちゃう・・・ 全体として一体何が書かれているのか? 70年代初頭の古きよき時代を懐かしんでいるのか・・・  人の心に踏み込まない、人に物事を強制しない生き方を是とし、そういう生き方しかできない人間が、どうしたら、人の心の痛みを知ることができるだろうか。そんなことができるのだろうか。もしそんなことができるならその方法を教えてくれないか・・・ 5、作品のその後の発展  直接的には三部作といわれる「1973年のピンボール」「羊をめぐる冒険」に引き継がれるが、「風の歌を聴け」に登場する人物やテーマは「ノルウェイの森」「ねじまき鳥クロニクル」にも引き継がれている。若くてきれいで、やさしくそして精神を病む女性のイメージ・・・ 6、村上作品とアメリカ文学 比喩、荒唐無稽な筋、趣味に凝る部分、そういうものを全部除いてもなにか残る・・・・・アメリカの現代文学の影響、書き過ぎない、人の内面に入り込まない、物がごろんとそこにあるような描き方。 ジェイズバーの雰囲気、女の子との対話抜群。 なぜ、外国文学なのか・・・父親との関係   村上春樹のSF通は有名 (この間、読んで面白かった作品) レイモンド・カーヴァー 短編「大聖堂」「僕が電話をかけている場所」「象」「でぶ」ジョン・アーヴィング 「熊を放つ」 ティム・オブライエン 「本当の戦争の話をしよう」 スティーブ・キング 「ガンスリンガー」 7、最近の社会性をもった作品について 「ねじまき鳥クロニクル」と「アンダーグラウンド」 日本をはなれて、日本がよく見えたわけじゃない。そういう時代ではない。しかし外国にいて、日本の社会を書いてみようと思った。 8、村上春樹の生き方 ・ 抜け道(逃れるところ)のある社会の方がいい、人が好みにしたがって生き方を選択できる社会 ・権威主義、官僚主義に対する嫌悪 ・自由を求める心 村上春樹に関する資料 http://www.age.or.jp/x/aho-san/haruki.html に完全なもの