みかん白書

こたつにみかん。
これこそ日本の家庭を代表する風物詩でありましょう。
寒い夜には日本中でこの光景が見られると思います。
家族揃って一家団欒。
その仲を取り持つみかん。

私は先日、このみかんを生産しているみかん農家で話を聞いてきました。
その農家では、自分の所で作っているみかんを出荷する分と自分達が食べる分を完全に区別しているそうです。
なぜだろうと聞いてみると、出荷する分は見た目が美しく、より甘いものでないと高値で売れないために、化学肥料をはじめ、農薬やより良い色を付けるための硫黄などを使っているそうです。
その結果、強烈な薬漬けになってしまいます。
その薬の中には、マスクをしていても気分が悪くなるような強烈な薬剤もあるそうです。
そうやって出来上がった美しいみかんは、より高値で取り引きされます。
しかし、生産者はこういう事実を目の当たりにしているので、とても食べる気にはならないと言います。
余談ですが、多くのみかんがジュース工場へ運ばれます。
工場でジュースを作る場合、1個ずつ皮を剥いていく作業は非効率であるため、コストが高くつき、成立しないそうです。
そこで、ある薬品をみかんにかけ、皮をドロドロに溶かしていきます。
その現場を見た友人は、二度とみかんジュースを口にしたくない、と言っていました。

さて、なぜこんなことが起こるのでしょう。
みかんを買う側も、買うなら美しくて甘いみかんが良いと思っている以上、そういうみかんしか売れません。
だから生産者もそれを作らざるを得ません。
また、当然、化学肥料や農薬を作っている会社も、大量に使ってもらえば、お互いの利益がそこで一致するためにこのようなことになってしまうのでしょう。
しかし、本来は自然が作り上げたものの方がやはり体には良いし、自然な味をより感じることができます。
その反面、見た目が悪く、虫が食ったりするのでなかなか現実的には難しいのでしょう。
美しいみかん。
それは虫も食えないみかんだったりするのかもしれません。
もっとも、全てがこのような状況とは言えませんが、こういう事実があることも否定できません。
こたつにみかんの美しい日本の風物詩は、知らない間に内側から壊れていっているのかもしれません。

このような社会構造をなんとか少しでも変えて行けないものでしょうか。
みかんに限らず、無農薬野菜が話題になっていることですし、食べ物は重要なので、消費者ももう少し知識を深めた方が良いのかもしれません。