自分のことは自分が一番良く知っているというけれど、こと鏡に関してはどうやらそうでは
ないらしい。
私を含め、世の中の人達はそれほど自分の顔が良いと思っているわけではないと思うが、
鏡に映った自分の顔を見る時には正当な見方が出来ない。
しかし、世の中の女性達は鏡の前に長い時間座り、より自分を騙しやすい角度や表情で
自分の良い点を最大限に活かし、悪いところは出来るだけ見せないようにして事細かに化粧をしていく。
そして出来上がった自分に「よし、これでOK!」と呪文をかけ、イメージの中でいい女になりきる。
それが自己欺瞞(じこぎまん)のパワーだ。
けれども、その自己欺瞞がなかったら鏡に映った自分を見た瞬間、化粧なんかどうでも良くなって、
人生すらつまらなくなってしまう。
この能力が高い人は、思いっきり自分を良く見ることが出来るのでナルシストになれる力を持って
いるのであろう。

どうやらその能力は身内にも適用されるらしい。
父親・母親は自分の子供をめちゃくちゃかわいいと思って育てる。
親の欲目で自分の子供を見るのは欲目で自分の顔を見ているからだ。
でも、そんな自己欺瞞がないと生きていくのは結構辛いかもしれない。
自分の顔を正当に評価して、自分をブサイクだと判断すれば生きていくのが辛いだろうから。

そう思いながら撮影の前にしげしげと鏡を見る私。
最近忙しいので肌荒れが少し目立つ。
えーい、自己欺瞞、自己欺瞞!
きっと鏡の中には夢見る少女が映っているはずなのだ。