私はその日、居酒屋の前で凄まじい光景を見た。 女性が男性の胸ぐらを掴み、何やら言い合いをしている。 誰がどう見ても喧嘩に違いない。
”へぇ〜、女の人も男らしくなったものだ”と思った矢先、その女性がジャンプして男性の顔面にグーでパンチをしたのだ。 平手打ちならまだしも、グーである。 これはなかなか見られない。
私が車で通りすぎざまの出来事だったので、何があったのかはわからないのだが、貴重なその一瞬を目撃することができたのである。
私はお節介なことに、その女性がグーでパンチするに至るまでの背景を想像してしまった。
男女共、年齢は30歳位。 おそらく女性は結婚を心に決めて交際していたに違いない。
1年程の交際を経、女性にも「この人となら・・・」と思っていたある日、2人はいつものように居酒屋で楽しくデートしていた。 しばらくして、男性がトイレに行くため席を立った。 テーブルは女性1人になった。 その時、男性の携帯電話が鳴った。 誰からだろう、と女性は彼の携帯電話を覗き込んだ。 全く知らない女性の名前が表示されていた。 留守電モードに変わると、女性はメッセージを聞いた。 その声はまだ20代前半位の若い声だった。
そして、やけに馴れ馴れしい口調で電話口の女性は彼女が聞いているとは知らずに話している。 さらに「昨日は楽しかった〜」なんていう言葉まで吐いている。 メッセージを聞き終えて、女性は携帯電話を元の位置に置いた。
男性が席に戻ると、女性の顔つきが変わっていた。 異変に気付いた男性は、女性に聞いてみた。 女性は口を固く閉ざし、視線は携帯電話に向けられている。 沈黙が続いた。 そして、女性が重い口を開いた。 「この人誰?」
男性は携帯電話の受信記録を確認し、ヤバイと思いつつ「ただの友達だよ」と言った。 女「フ〜ン、やけに馴れ馴れしく話すのね」 男「・・・まぁ、友達だからね」 女「友達って言ったって、私の知る限りこんな子知らないけど?」 男「最近知り合ったんだよ」
女「あら、そう。最近知り合って随分色々一緒に遊びに行ってるみたいね。
昨日って、私と会う約束があったのにキャンセルしたわよね。
私と会うよりも、その子と遊びたかったわけね!」
男「いや・・・そういうわけじゃないよ・・・。君なら今日も空いてるし、付き合いっていうの?
そういうのってあるじゃないか」 ・ ・ ・ ・
あまり大きな声になるといけないので、2人は外に出た。 女「で、私とその子、どっちの方が大切なわけ!?」 男「それは・・・あの子の方が・・・」 バシッ!!
その後の展開を見られなかったのが残念だが、私としてはここまで勝手に想像力を働かせてもらったので良しとしよう。
男性諸君、女性がグーでパンチをするようなことにならないよう、お付き合いは計画的、且つ慎重に・・・。
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