3時のおやつに牛乳とカステラ。 実に王道な組合わせである。 まず牛乳を一口飲み、次にカステラを食べる。 水分を奪われた口の中を潤すべく牛乳をまた飲む。
そして、この組合わせはなんて素晴らしいんだろう、と心の中で叫び、体が打ち震える。 しかし、私に言わせればそれ位の食べ方ではまだまだなのである。
私はある日、この食べ方に疑問を持った。 口の中で牛乳とカステラは混ざり合い、見事なハーモニーを奏でる。
それなのに、どうして牛乳とカステラを交互に食べなければならないのか。
最初から一緒に食べれば、より素早くおいしさを実感できるのではないだろうか。
私はそう思い、急いでカステラを買いに行き、はやる気持ちを抑えながら買ってきたカステラに包丁を入れた。 まず小皿を用意する。 一切れのカステラを慎重に小皿の上に寝かせる。 冷蔵庫から取り出した牛乳を少しずつカステラに染み込ませる。
この先は個人の好みもあるが、私はカステラから少しだけ染み出す位に牛乳をかける。 フォークを用意し、脈拍を整えたところでカステラに切り込みを入れる。 震える手でフォークの上に乗ったカステラを口の中へ運ぶ。 噛みしめる。 うまい。
カステラの甘さが牛乳で緩和され、マイルドになって新発売!という感じである。
噛むほどに染み出してくる牛乳もほのかに甘く、お子様にもお勧めである。 そんなことを思っていながらも、手は次の一口を用意している。 また口へ入れる。 うまいのだ。 そうして一切れのカステラはあっという間に跡形もなく消えてしまった。
いつもは太るのを気にするため、追加は基本的にないのだが、この時ばかりは次の一切れもさっさと用意して、気付いたら牛乳をかけて食べていた。
この話をスタッフにすると、長崎県出身の人は「おいしいカステラを食べてないからだ。邪道だ!」と言って私をバカにしていた。
しばらく経って、このスタッフは近所で安いカステラを買ってきて試してみたところ、牛乳とカステラのハーモニーにノックアウトされ、今ではすっかりこの味のとりこになっている。
そう、この技は安いパサパサのカステラでこそ威力を発揮するのだ。
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