版画の保存方法について

講師 岩井希久子(絵画保存修復家)
日時 1990年7月6日(金)
版画を含む、紙でできている美術品は全て中性か弱酸性の環境で保存するの
が良い。

1.

保存の環境について

a.

年間を通して、温度・湿度が一定であること。理想的な温度は20度+-2度。
真夏でも25度を超えない方が良い。湿度は55%+-5%が理想で、カビを防ぐ
ためには75%以下とする。温度、湿度、養分のうちどれが欠けてもカビは防
げるが、温度より湿度を調整するのが肝心である。
カビが生じた場合は、胞子を払い、アルコールで消毒し、防虫剤・乾燥剤な
どを入れまめに取り換える。時々換気、虫干しをし、風を通す。台所や空調
機の風が直接当たる所は避ける。カビは温度28度、湿度75%を超えると発生、
成長する。

b.

空気が清浄であること。煙草の脂、油汚れ、空気中の不純物、ほこりなどは
額装をすることでも解消されるが、裏ぶたは工夫したほうがいい。

c.

直射日光が当たったり、不適当な照明をしないこと。理想的な照度は50ルッ
クスかつ紫外線、赤外線をカットし、自然光に近いものを使用する。直射
日光の当たるところに絵を置いた場合、紙焼け・褪色をおこす。特に浮世絵
は光による褪色がいちじるしい。

2.

額装するときの注意

a.

マットはラグボード(国産AFボード)などのph8以上の中性マット紙を用い、
3〜4mm厚のものを二重にする。

b.

ヒンジは和紙を用い、水溶性ののりで付ける。のりは生麩のりが良い。
ヤマトのり、化学のりも可であるが、水溶性でないものは酸化して、作品
をだめにしてしまうので、絶対に使用しない。

c.

ガラスはUF3という紫外線カットのアクリルガラスがいい。画面とガラス
の間は十分に開けておくこと。

d.

額装裏面の板は、中性のボール紙を使用する。中性のマット紙だけの場合
は湿気を吸いやすいので、注意する。ベニヤや酸性の強い木、あるいは新
しい木の枝などは絶対に使用しない。

e.

箱にしまい密閉保存する時、調湿紙、調湿剤、調湿土などを用いて湿度を
コントロールし、防虫剤、防カビ剤などを併用する。また夏をこしたら、
風を通し防虫剤などを入れかえる。日本では漆加工のない桐箱が理想的。

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